日本の石炭新発電技術

報告:日本の電力部門の脱炭素化における石炭新発電技術の役割

日本は、2050年までにネットゼロを達成するという気候に関する長期目標を設定している。本目標の達成には、日本国内の電力部門の急速な脱炭素化が必要とされる。しかし、国内発電量の約3分の1を石炭に大きく依存する国として、まだ日本は石炭と決別する準備が整っているようには思われない。今後10年間の日本のエネルギー政策を詳述した第6次エネルギー基本計画では、2030年になっても電力需要の5分の1近くを石炭が占めるとされている。

COP26で岸田文雄首相は、石炭新発電技術、いわゆる「クリーンコール」テクノロジーを利用することで、「既存の火力発電をゼロエミッション発電に転換」し、日本の石炭依存をネットゼロ目標と一致させる計画を発表した。

本報告書の目的は、現在検討され、日本国内で導入が進められている石炭新発電技術を技術と経済の両面から分析することにより、日本の政策立案者、電力会社、世界的投資家に戦略を提供することである。

本報告書で取り上げる石炭新発電技術とは、アンモニア混焼、石炭ガス化(IGCC)および二酸化炭素回収・貯留(CCS)を指す。再生可能エネルギーが日本のエネルギー需要を満たす可能性も分析する。本分析により、電力部門における石炭新発電技術の役割が緊急に見直されるようになることを願っている。

COP26で演説を行う岸田文雄首相
写真提供:首相官邸ホームページ (クリエイティブ・コモンズ)

日本の石炭新発電技術に関する主な調査結果

分析の結果、石炭新発電技術は電力部門における排出削減能力に限界があり、高コストであることが判明した。

  • 高コストな石炭新発電技術

o   石炭新発電技術の現在の均等化発電原価(LCOE)は、IGCC適用技術の128米ドル/MWhからグリーンアンモニア混焼の296米ドル/MWhまでの幅がある。石炭新発電技術の平均原価200米ドル/MWhは太陽光発電(PV)の以上である。

o   再生可能エネルギーの変動しやすさに対応する電池貯蔵を含めても、太陽光発電と陸上風力発電は、2020年の段階ですでにほとんどの石炭新発電技術と比べてコスト面での競争力を有していた。

o   この傾向は以降も続き、2030年までに太陽光発電と陸上風力発電に電池貯蔵を加えたコストパフォーマンスは、すべての石炭新発電技術を上回り、CCS対策なし石炭すらしのぐ。

  • 石炭新発電技術はネットゼロ達成と両立しない

    • CCSを備えない石炭新発電技術の平均炭素強度は、ネットゼロに向けて2030年までに必要とされる日本のエネルギー供給網の5倍以上である。

    • 排出係数の観点から見れば、CCSは石炭新発電技術の中で最も実現可能性が高いように思われるが、日本の限られた貯蔵能力を考慮すると、CCSはエネルギー混合において石炭を維持するための持続可能な解決策とはならない。日本の炭素貯留容量がわずか10年で尽きるという推計もある。高コストと途方もないエネルギー面での代償が、さらなるハードルとなる。

日本の電力脱炭素化に向けた政策提言

分析に基づき、TransitionZeroは、利害関係者がエネルギー移行におけるリスクとチャンスに対処できるよう、以下のハイレベルな勧告を行う。

  • 発電のためにアンモニア混焼が果たす役割の再評価

  • 「後悔のない」産業部門でのグリーンアンモニア適用の優先

  • 国内外の今後のエネルギー情勢におけるIGCCの役割の見直し

  • CCSへの投資と日本の少ない貯留用地に関する慎重な対応

  • 統合コスト削減のための統合化されたアプローチの採用

  • 短期的には新しい石炭新発電技術から成熟した再生可能エネルギーへの切り替え

  • 洋上風力発電の推進による顕著な潜在的再生可能エネルギーの活用と急勾配の学習曲線の実現


政策提言と報告内容の詳細については、報告書の全文をご覧ください。


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